昭和 40 年台に刊行された、富士宮の歴史や各種データを綴っ た「富士宮市史」上巻。じっくり読んだことのある方がどれだけいるだろうか。調べ物で読む機会を得たのだが、地域の伝承に ついての記述が非常に興味深い。
- 坂上田村麻呂が浅間大社を建立したというのは本当だろうか?
- コノハナサクヤ姫が定着するまでは浅間大社には男の神が祀られていたのでは?
- 源頼朝がどこで巻狩したのか?
- 源氏、武田、 織田、今川、徳川など数多くの武将が富士宮を大事にした理由とは?
など、単に「歴史書」というよりは、表に出てこない「あな たの知らない、本当の富士宮の歴史」を表した研究書物の側面 があると感じた。とにかく定説への「ツッコミ」が多いのである。
「諸事情により、最終的な刊行には長い年月を要した」と、著者団はあとがきに記しているが、個人的な想像だと、そうした物議を醸すような研究、ツッコミ、推論などもまじえた「一石を投 じる書」の性質を持っていたからなのではないか、と勝手に想像している。
だが、市当局や関係者の粘り強い姿勢で、完成を見るに至っ た情熱は評価すべきであるし、●●は○○がルーツです、と一般 に言われていることを鵜呑みにしない姿勢で物事を多面的に見る事の大切さを、静かに密かに私達に伝えているように思う。